一人称

　本の音読を趣味にしている。
　ただ目で追うよりも、声に出て見たほうが読んだ実感と言うか、臨場感と言うか、そういうのが得られる気がするから結構音読している。
　脳内イメージどおりの声がでなくてがっくりすることも結構有るが音読している。

　本にはもちろん一人称が私、俺、僕、わらわなど、色々でてくるが、先日読んだ本はその中でも一際俺が多かった。

　全部音読するのにはページが多かったから部分的に音読しつつ、読後の爽快感に浸っていた。
　その後だった。

　家族と会話したときに、つるっと口から俺が出た。
　私は、と言いたかったんだ。
　そこでつるっと俺がでた。

　俺は――……

　といって凄くショックを受けた。
　自分には似合わない。
　凄く、似合わない。

　しかもその時、俺、と言いつつ私、と言おうかどうかも迷っていたらしい。
　微妙に声は裏返っていてとても恥しかった。


　とりあえず矯正のために、私、と言う一人称が多い本を３冊音読した。
　多分もう大丈夫だ。